「方便」
〜足さばき、打ち方、旋回の簡略化
■75剱を使うのに、その足裁きは変幻自在な
足運びがなされます。
例えば・・・いまやっていますように、前に出て
組んで打つ・・・をはじめ、
下がって、すぐ出て打ち返す
右に入って組み、打ち返す
左に入って組み、打ち返す
組みながら、相手の背後に回り込んで打ち返す
出て受けて、引いて打つ・・・・など、など、
一見、同じ技とは思えないほどでありますが、
実は、そのどれも、同じ腰の動きから
出ているものであることはご承知のとおりです。
このように、75剱の技を用いるのに、
いままで、様々な足さばきで行ってきました。
そのどれも必要であり、
試みてほしい足さばきであります。
しかし現今の稽古では、重と軽の剱を、行った後、
中の剱の稽古しています。
例えば、『ア』と『ヤ』の技を稽古した後、
それを統合した剱『ワ』の剱を行・・・という風に
一回の稽古で三つの技をやっているわけです。
慣れれば、共通した動きであることが理解出来ますので、
まったく問題ないのですが、
しかし、初心者の方もおられ、慣れない方も入られて
稽古しておられる都合上、あまり複雑な
足さばきをもって行うと混乱をきたす恐れがあります。
よって、最も単純な動作である「前進する」だけの
足さばきをもって稽古することにいたしました。
古参の方には、立会いの際には、
様々な足さばきを用いて、自由に動いてみられるのも
いいと思います。
和良久の「自由」とは、八力の範囲において
自在に変化して動くことを言います。
つまり秩序ある自由です。
これが天国でいうところの自由というものです。
■また、打ち方も、本来「八剱」すべてを打ち込み、
内回り上からの突き、下からの突き
外回り上からの突き、下からの突き
など四つの打ち方も合わせて、合計12通りの
打ち方をもって、75剱の稽古をすべきもので
ありますが、これまた、解あるいは、弛の一つか
せいぜい二つの打ち方をもって相対しています。
古参の者どうしが行う際、この打ち方も
すべて打ち込んでいただきたいものです。
本当に円い球体を形成させるためには、
ある一方の方向からの力を加えるだけでは
円くなりません。
例えば、お団子を作るように、周囲全体から
圧を加えていくようなものです。
「すべてを円くおさめる技」を身につけるには
前後・左右・上下から力を加えてくるのに
対応できるようになることです。
■そして、もう一つ・・・
75剱、各剱の旋回ですが、
本来相手が打ってきたら、それを組んだら
同時に即打ち返す高速の技でありますが、
現在は、例えば、「クル・・・」「クル・・・」
「ストン」という様に、非常にゆっくりとした旋回で、
しかも、
すべての稽古人に分かるように、はっきりとした
回転をもって剱を扱っています。
なぜこうしたゆっくりな旋回を行うのかといいますと、
我々で言う「力」と言うものは、この螺旋から
生み出されるものであり、それが自然な力というものであり、
また最も強い力であるということを
学ぶためであるからです。
旋回が発生できていないのに、
急いで打ち込んだところでは稽古にならないからです。
たとえ、時間はかかっても、ゆっくりと正確に、
また和良久においては、
円く円く動くことを心得ることです。
一見複雑に見える和良久の技は「螺旋運動」の
働きあってこそ可能になるものなのです。
しかし、螺旋は世界一単純な動作であることを
知ってください。
ただ、我々はいつの間にか頭が良くなり過ぎて、
つまり考えすぎる癖がついて、この単純な動作が
出来なくなってしまったのです。
■・・・以上のように、稽古を行っていまして、
古参の中には「はて・・・、いままでやってきた技と
ちょっと違うのではないか?」と疑問視される諸氏も
あろうかと存知、ちょっと説明させていただいた次第です。
古参の方には、方便をもって初心の方に合わせてあげれる
親切心と、その余裕をもつと同時に、
自己のもつ体の使い方の限界に
どんどんチャレンジされて良いと存じます。
しかし、間違ったことを、間違ったままでおいておくと、
かえって心身を損ねることにもなりかねないので、
ゆっくりやって、技の動作の確信を得てから
高速の世界に入っていってください。
初心の時代は「ゆっくり、柔らかく、やさしく」の
リズムで練っていただき、
次に「速く、強く、勇ましく」のリズムに
移行していけるよう歩を進めてください。
ちなみに、同じスサノオの神様でも
「タケハヤ(建速)スサノオの神」と唱える時は、
この「速く、強く、勇ましく」のリズムをもって
活動されることを言います。
続く・・・