「水火を観る」(1)
いよいよ「中の剱」の組む稽古に入ります。
中の剱・・・これは連打の剱です。
武術風に、簡単言えば「仕掛けさせて勝つ」
という極意のひとつに挙げられる高等技術です。
しかし、この稽古に入るには、
相手の「水火を観る」ことが必要になってきます。
この「水火を観る」と言うこと。
何か難しそうに思えますが、所謂、
「螺旋が生み出す調子、拍子、間を取る」
と言うことです。
さて、一般に日本の伝統芸能で、この
「調子、拍子、間」ということが
非常にうるさく言われていますが、
一体何のことでしょう?
各種芸のプロでも、これは質問しても
中々に答えてくれません。
「そんなのは言葉で説明できない。
厳しい修行をして身につくものだ」
・・・だいたい、そう、言われます。
つまり本人達もよく分かってないと言った方が
良いかも知れません。
しかし、和良久ではすぐ具体的に説明が出来ます。
それは、こういうことです。
調子とは、左右のスイングで、技に柔らかさを出します。
拍子とは、上下のリズムで、技に強さを出します。
間とは、前後の伸び縮みで、技の集中力を出します。
・・・と言うことで、この調子、拍子、間が
統合したのが螺旋運動なのです。
逆に言えば、忠実に螺旋をしていれば、
これらが出来っているということなのです。
「水火を観る」とは、この
「右、左遷の螺旋の動きをキャッチし、この旋回に乗る」
ということなのです。
例えば、相手が解を打つとしましょう。
解を打つには「内旋」しなければなりません。
この内旋から発する剱の旋回を観て、
その螺旋にうまく乗り、身をさばくことです。
相手が何の打ちをするのか、
相手が打って来る先に知ること、
と言ってもいいでしょう。
相手が何をするのか先に知れば、
様々な対処の方法が考えられます。
その最もベストな方法を教えてくれるのが
「中の剱」の稽古なのです。
しかし、この中の剱を使いこなすには、
手の内の剱の扱い、つまり「コロコロ」が最重要になります。
基本的に「自転の剱さばき」が出来るレベルが
中の剱の使い手なのです。
もちろん、ソコソコの動きなら、直ぐに真似できます。
しかし、きちんと出来るようになるには、
個人差があります。
奥山忠男先生の話の中で、
「井上先生(親英体道道主)は、よくこう言ってた。
稽古に大事なのは、一に真剣勝負の感覚。
二に緻密さ。三に量である、と。
この三つが打ち揃ってこそ上達するんだ、と」
勝負の無い和良久では、この一の真剣勝負の感覚と言うのは、
「一生懸命に命をかけて真剣に打ち込む態度」と解釈します。
さあ、あなたは何年かかるでしょうか。
続く・・・