「鳳雛舘」(1)
私が鳳雛舘に来たのは丁度20年前の今頃です。
鳳雛舘は私がもっていた武道とは違う、
別の次元の空間をもった建物でした。
建物そのものが
真の武道のあり方を物語っているようでした。
ここには、聖師様の額「雷撃電飛」の文字のように
躍動的な呼吸が脈打っています。
他の国の混じり物を寄せ付けない空間があります。
「日本魂の養成所」と言っていいと思います。
当時の稽古を振り返ってみます。
これも皆様にとって何かの参考になればと思います。
・・・奥山先生の稽古は厳格でした。
いえ、格闘の世界にいた、
それとは違う意味の厳格さです。
それは道場の出入りから始まります。
礼も、挨拶もせず、突然「がらっ」と玄関の戸を開けて
入って来ようものなら大変です。
「こらっ!ここをどこだと思ってるか!」
「今は稽古中だ、出ていけ!」
私は、大声で怒鳴られた人を何人も見ています。
鳳雛舘は掃除で始まります。
稽古後に掃除ではなく、稽古前に掃除をするのです。
「掃き掃除はお祓いです。邪気を掃き出すんです」
神事としての所作を重んずる先生でした。
ですから、掃除の仕方ひとつでも、私はよく叱られました。
(細かいことの中に深い意味があることを
後になって発見することが沢山ありました)
鳳雛舘は、奥から玄関に向けてゴミを掃き出していきます。
それも畳半畳づつ、きっちり、きっちり丁寧に、
ゴミが空中に飛ばないように、
箒を押さえるようにして掃くのです。
掃除が終わると着替えです。
袴の紐を締め終わるまでの沈黙が、
稽古に入る心構えをつくっていくような気がします。
まさに戦場に向かう侍のようでした。
着替えの後整列。
正面の大戸を稽古人が率先して開け放ちます。
この大戸を開けると梅林が広がり、その遥か向こうには
月宮宝座という亀岡大本本部の至誠所があります。
そこに鎮まり居ます大神様に礼拝。
大神様に稽古に入らせていただくことの許しを得ること、
この稽古をもって大神様のお役に立てることを祈念します。
この時、奥山先生の先達で祝詞を奏上。
私は、祝詞についてもよくご指導いただきました。
ことに言霊については厳格でした。
「ただワーワーと声だけだしてもだめ」
「能楽をやれば分かる」
かくして、私は師の言いつけどおり、
早速に能楽の世界にも足を踏み入れたのでした。
宝生流謡曲、大鼓など一生懸命になってやりました。
それで祝詞の発声を勉強しました。
また日本独自のリズムというものを肌で感じました。
続く・・・