「1〜3の間」
遠い向こうに幾人かの人が立っていますが、
一体自分の相手は誰なんだろう?
・・・そう思い、背筋を伸ばし、
心と体を中心に戻して心を澄み切らせます。
息を凝らして、向こうを見やると、
あちらからもこちらを見ている人がいます。
体の正中線(頭の頂上から鼻筋をとおり、
みぞおち、そして臍に通じる一本の線)を、
その人に向けて相対すると、線と線がぴたっと合い、
同時に息も合います。
つまり、相手の中田と、自分の中田を合わせた、
相互ともに「ウ」の状態です。
「ああ、自分の相手はこの人だ」う確信します。
お互いが眼を息を合わせ、体を合わせ、
動きを合わせます。
どちらともなく、ほぼ同時に「礼」が起こり、
引かれるようにして歩み始めます。
「ス」の言霊そのままに、「すー」と近づくのです。
徐々に近づいていきますと、
相手の呼吸の温かみが伝わってきます。
そして、やがてお互いの劒の間に差し掛かります。
劒と劒が交わす距離まで3〜5歩手前となります。
ここまでが、第一の間で、ここから第二の間です。
間が近くなり、相手の呼吸が熱く感じられます。
この熱気に触発され、劒を静かに構え
剣尖を相手に向けます。
益々、腰が落ち、腹に力が入り
「ウ」の状態となります。
そして、それから約3歩。
もう、これ以上近寄れない、一触即発の間。
「ウ」の極みに入ります。
呼吸も、体も爆発寸前です。
あと一歩入れば劒の激突です。
この間が第三の間です。
さあ、どちらから打つ?
しばし、息の探りあいが続き、
そして一気に解き放たれたように
アクションが起こります。
お互いが「ウ」の状態の極みゆえ、
そのお互いの呼吸は、火と水の、つまり
プラスとマイナスの電極のスパークのように
激しく火花が散るごとくぶつかります。
私は、この時の現象を
宇宙創生時のビッグバンのようなものだと思っています。
ウの極地が生み出す、新たな力の発生。
そして、ここからすべてが始まるのです。
「ス」からへの「ウ」の移行、これが「間」です。
この稽古により、静かに、
しかし激しくほとばしるエネルギーの動きを感じます。
動く鎮魂と言ってもいいと思います。
また、人生の出会いから別れというのも
間の稽古と同じようです。
続く・・・・