「水火の宮殿〜八尋殿の建立」(2)
前号に続く・・・
イザナギ、イザナミの両神が、
天の浮橋に立ちて、天沼矛(アマノヌホコ)を
シホ(水火)、コオロコオロと掻き均され、
その矛を引き上げられた時に、
矛の先より滴り落ちるシホが積もって嶋となった。
これが「オノコロジマ」である。
漂える国を整理するためには、
まず第一に中心軸を決めねばならない。
中心が定まってこそ四方の構成が整備できる。
より堅固で正確な中心軸を決めるには
旋回運動を起こさねばならない。
また、イザナギ、イザナミの両神は、
オノコロジマに下って
「天之御柱(アメノミハシラ)」を建てられた。
天之御柱こそ、天沼矛そのものなのである。
この天沼矛が宇宙創造の中心となり、
また矛を軸として外周が定まるのである。
この天沼矛の旋回の力で、
空間に堅固なる秩序と荘厳なる働きが生まれ、
いよいよ外へ外へと無限に進展し、
明確な秩序を構築するその様子は、
あたかも宮殿を造営するが如しである。
この宮殿を八尋殿(イヤヒロドノ)と言う。
「イヤ」は、弥益々。
「ヒロ」は、進展。
「トノ」は、宮殿という意味であり、
その意味たるや、まさに文字通りである。
要は、八尋殿の建立によりて、
宇宙構成の範囲を定め、
構成の図式を正確に規格しうることになる。
その図式の規格範囲内に万有の存在と行動、
そして意義が成立する。
イザナギ、イザナミ二神が建てた宮殿「八尋殿」は、
大宇宙の姿そのものなのである。
しかし、いま、その八尋殿が
言霊(水火)の乱れにより崩れ始めつつある。
つまり宇宙秩序の崩壊が起こりつつある
ということである。
言霊の乱れとは、
ただ音声の乱れだけを言うのではなく、
広義には、水と火の組み合わせが
整っていないということである。
宇宙の法則は、霊(火)主体(水)従である。
また、この水火は十字に組まれてこそ
本来の働きをなし、バランス、調和を保ち、
旋回を起こし、
もって宇宙の運行が継続されるのである。
この運行が不安定になることを、
水火の不調和といい、
アオウエイの音律が乱れていることなのである。
こういった言霊の乱れは、
あらゆる「気」に影響することになる。
まず、天気の乱れを起こし、
次に地気の乱れを起こし、
そして人気の乱れを起こす。
天気の乱れは、風圧をもって、
地気の乱れは、地震をもって、
人気の乱れは、火と水をもって潔斎される。
これ、神ながら的な自浄作用である。
人間も呼吸が乱れたら、
深呼吸などをして呼吸を正すであろう、
これ息吹なる風の自浄作用を
自然に行っているのである。
また、体が疲れたらマッサージなどをして
揉んでもらったりするであろう、
これ肉体を震わせることによる地(体)の
自浄作用である。
人心の乱れは、戦い、争いとなる。
これ火による自浄作用である。
またこの火は、水をもって消し去ろうとする
自浄作用が起きる。
このように、知らず知らず行っている
人体の自浄作用は、
宇宙においても同様に行われていることなのである。
天にあることは地にもあり、
地にあることは人にもある。
天地人は一体であり、
天は言、地は心、人は行の基である。
言うこと、思うこと、行うことが一致し、
それが偉大なる共通の意思とつながっているならば
恒久平和は保たれる。
頭髪も伸びて見苦しくなれば散髪する。
着物も汚れれば洗濯する。
靴も泥がついたら洗い落とす。
家の中が散らかったら掃除をする。
汚れたところには蛆が湧く。
ゴミを拾わなければ、
そこには益々ゴミが捨てられる。
「持っている者は益々与えられ、
持ってない者は、持っているものまで
取りあげられる」と聖書にある。
宇宙の秩序に合うものは、進展してやまず、
それを乱すものはその存在を消される・・・
ということである。
いま、宇宙の秩序たる
八尋殿の柱や屋根や壁が崩れかけている。
屋敷が痛めば、あるじの指示で、
大工が入って修理するであろう。
当然のことである。
こまごまとした、部分的修理ならともかく、
これ以上手のつけられないような崩れが生じないよう、
そこに住む者は、手遅れにならぬよう、
いまから余程気をつけてかからねばならい。
でなければ、最後、あるじは建て替えを決断するに至り、
八尋殿はいったん取り壊され更地にされるであろう。
このように、屋敷は長くもつか、短く終わるかは、
住む者の管理の心がけ如何によるのである。
続く・・・・