案山子の海渡り
ただひとり 野に立ち黙して動かざる
案山子のこころ たれか知るらむ
雨風に また暑さ寒さに耐え忍び
野に立つ案山子の すがた勇まし
ぼろぎれを まといし姿のその内に
ひそむまことを たれか知るらむ
かかせおの みことのごとくわれもまた
しのびしのびて 時をまたなむ
ひたすらに 田をもるかかしのひたむきな
姿学びて 道にいそしむ
ふるふると 振るいきよむる み手ぶりの
わざもてけがれし たまをすくわむ
悲しみも また楽しみもひとときの
うつろう季節の 風のようなり
さてわれに 悪心ありてふれてみよ
なれが心でなれの傷つく
このわざは あくがみどもを蹴散らして
みろくのみよを たつるかみわざ
うしとらの こんじんさまの守りうけ
恐れもしらに 勇み進まむ
たぢからの かみのちからは言霊の
響きによりて 生れし力ぞ
アオウエイ 七十五声の言霊の
息吹によらずば 岩戸開けむ
この岩戸 再び閉じたるものなれば
並みの力で 開くあたわじ
水のごと 清くまろやかなればこそ
こころの月の あかく照るらむ
竜宮の 乙姫さまのはからいで
みろく殿にて 和良久行じぬ
夢にみし みろく殿での初稽古
とつくにびとらと 和して行じぬ
神殿の そとながむれば金龍の
海ひろがりて こころ晴れなむ
とつくにの もろびとあまたつどいきて
こころひとつに 和良久学びぬ
言霊の ひかりかがやく金龍の
海より湧きづる力凄まじ
七十五 水茎文字のあらわれし
綾の聖地の くしびなる池
金龍の 池より竜神舞いきたり
われらの稽古を みまもりたまいぬ
とつくにの もろびとたちも声そろえ
ちからかぎりに 言霊のるらむ
八力の 型おさめむと 一心に
背筋のばして われと動きぬ
身をおさめ 口と心をおさむるは
道を学びし 者の心得
あれこれと わがそばよりて質問の
集中砲火はやまざりにける
次々に 即答なせしに驚きて
かれら近寄り われを囲みぬ
わが話す 奇妙奇天烈回答に
目をまるくして 聞きいりており
いつしかに メモとる人も多く出で
とつくにびとらの気迫つたわる
参加者のなかより 紳士の進み出で
われにかしこみ あいさつなさむ
かれのいう 来年春にイタリアで
きみが和良久を紹介したし
きみとまた 二人の弟子をともないて
是非に来たれと 礼を尽くさる
竜宮の 乙姫さまのはからいか
和良久のわざの 海に渡るは
言霊の 水火の力も七十五
そろいてこの世のたてかえはじまる
水茎の 文字うかびたる金龍の
海より放射す 妙なる光
ながきとし 待ちわびたりてようやくに
みずくきしめす よとはなりたり
木剱の すぐなる形を思いみよ
これぞやまとの たましいなるらむ
わがくにの やまとだましい知りたくば
これのつるぎを 持ちて振るえよ
一霊と 四魂のはたらきまったくす
これぞ言霊つるぎなりけり
つるぎとは あれとこれとをかけあわす
和合のわざとや たれが知るらむ
争いに 用ゆるわざがつるぎよと
思いし人の 多き今の世
武のわざは それそのままにかみくにの
神秘伝うる 歴史なりけり
この国は いかなる国ぞと問われなば
われは無言で つるぎ差し出す
この姿 みて覚れよと ひとことを
のこして われは部屋を去りなむ
神と人 結び合わせる鎮魂の
妙なるわざが つるぎなりしを
このわざが 世に広がればたちまちに
張りめぐらさる 水火の結界
大宇宙 その運行のありさまを
体現なせる 和良久の技は
星と星 結びし力を思いみよ
これぞ渦巻く水火の力ぞ
吸ういきは あがりて天に広がりぬ
吐くいきさがりて大地に沈む
言霊の 息吹の祓いにまがかみは
追いやらわれて 逃げ場失う
おもしろし まがども慌てるそのさまは
群れなす めだかのすがたに似たり
続く・・