日本刀と剱
日本刀は日本の心、武士の魂である。
……と言われます。
果たしてそうでしょうか?
あれは殺人の為に精妙に造られた「包丁」です。
それは中国の蛮刀の類の影響を受けたとみられます。
よく切れるために計算された反りの角度と、美術的装飾は、元来和を尊び、簡潔さを良しとする大和民族の趣向ではありません。
また刀の振り方ですが、頭上後方へ振りかぶり振り下ろした時は、剣先を足元まで下へさげます。
剱は、上は天剱(垂直剱)に捧げ、下は地剱(水平剱)に降ろします。
これが天地の範囲です。この範囲を螺旋を描いて往復するのです。
地剱は、地の広さを表し、大地の呼吸力を。
天剱は、天の高さ、宇宙の広大さを表し、天の呼吸を表しています。
刀の垂直、水平の角度を越える動き・・・
天地にそむいた働きといえます。
これでは呼吸の力を剣に乗せることはできません。
刀は丸い形状ですが、その扱いは他を殺すため直線的に振ります。
まことに人殺しの為の道具です。
「ツルギ」は神様のまつりごとを行う時に祭具として使われます。
「釣り合わせる義」がツルギと考えていいでしょう。
お祓いをする時、または「鎮魂帰神の神術」、つまり神と感応し神我一体となる時に用いられたのです。
反りが無く、真っ直ぐに伸びたフォルムは直立させた時は天を指し、下へ振り下ろした時は地に水平にし、それは人の道をあらわします。
刀に比べ、形状は直線的ですが、その振り方は円く、螺旋を描きます。
旋回するツルギの技法の特長は、けっして自ら仕掛けていかないということです。
相手が打ちかかってきて、初めてこちらの剱は力を得て動くのです。
相手の力の強弱によって速くもなり、遅くもなります。
つまり点火するのは相手です。
刀を使う相手は、天に唾をするのと同じ結果を体験します。
自分の打った剣の強さの、何倍もの速さと力を
増して自分にかえってくるのです。
「殺人刀、活人剱」という言葉が残っています。
刀は人を殺し、剱は人を活かします。
剱は宇宙を探り、神を知る道しるべなのです。