「素手の技」(1)
和良久は原則として木剱の稽古を主とします。
なぜなら、素手はややもすると筋力の優劣をつけ、
倒す、倒される・・・の競い合いに陥りやすいからです。
私は過去、この木剱の稽古に没頭する以前、
素手の研究を必死になってやった時期がありました。
そして、とうとう八力を素手に転化する技術をまとめました。
それは「75剱」をもとに「倒す」技術として現われ、
非常に猛烈な技でした。
この技の応用範囲は無限に拡大します。
掴み、投げ、打ち、突き、蹴り・・・
八力は様々な変化に対応できる
驚くべき技として五体に脈打ってきます。
私は、素手の技を研究し、ノート10冊を
越えるほどにまとめました。
しかし、この時自分の心に芽生えたものがありました。
それは角張った鋭利な刃物のような鋭さでした。
倒す技術の開発は、和良久の趣旨とは
正反対の要素を生み出したのです。
私は空気の良く無さを感じ、このノートを封印しました。
私は過去に素手の格闘技で天才といわれた空手家「芦原英幸」と、
言霊剱の創始者「奥山忠男」の二人に師事しました。
この二人、偶然にしては出来すぎてますが、
どちらも愛媛県の八幡浜におられた方々です。
私は18〜21歳の内弟子時代を八幡浜で過ごし、
芦原先生の回り込みの技術を叩き込まれました。
そして26歳に亀岡に行き、奥山先生に会い、
剱の世界に入ったのです。
この芦原空手、いま分析すれば
八力を駆使した倒しの技術でした。
ある武道のように、申し合わせたように
倒れてくれる見せ掛けのものではなく、
相手が本気になって殴る蹴るの中で使用可能な技でした。
この時の経験が大いに役立ち、
剱の技が素手の技に転化させることが出来ました。
また、既成武道の技のすべてが、全部八力で解明出来、
技の良し悪しを判定出来るようになりました。
続く・・・