特定非営利活動法人 武道和良久

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誌上講座262


「演武奉納の心得」(1)


稽古も進み、ある程度ご自身で
技も出来る方も出てまいりました。

ここまで技を覚えるのに
大変であったろうと存じます。

さて、技がある程度演じられるようになりますと、
私もそうでしたが、人にそれを誇りたくなる
気持ちが湧いてまいります。

何か人と違ったことが出来だすと、
公の場で披露したいと思うのは
自然な気持ちかも知れません。

見せて、驚かせて、褒められて・・・

人が出来ないことが出来るというのは
優越感があって楽しいものです。

ところが場を間違えると
大変なことになります。

ことに、酒宴の席で、
ほろ酔い気分も手伝って、周りの人たちが・・・

「あなた武道やってるんだって?
せっかくだからちょっと、どんな技か見せてよ」

などと言われ、皆の拍手に送られて
お大道芸人みたいに、つい調子にのって
前にしゃしゃり出てしまいます。

でも気をつけてください。

特殊な場合を除いては、
こういった席で技を披露するのは要注意です。

まず、あなたの技を
讃美する人ばかりではないということ。

場が場であるので、大半があなたを
珍し半分、面白半分で見ているだけです。

茶化して野次を飛ばす人もいるでしょう。

言うだけならまだしも、
非難する人があなたの前にずかずか出て来て、
もしこう言ったらどうします。

「なんだ、その変な動きは」

「実戦に役立つのか?俺のパンチを受けてみろ」

・・・などと、力ずくであなたの技を
つぶそうとする者がでてくるかもしれません。

そうなったら、あなたはどうします。

嘘とお思いでしょうが、
これは時々あることなのです。

昔の話ですが、空手時代、
私があるところで演武したとき、
場がよくなかったのか、
わざと邪魔をしようと思ったのかは分かりませんが、

「そんなのインチキだ!通用するものか」

このように、ある男が言いがかりをつけてきました。

私は「よし、そう言うのなら、
どっからでもかかってこい!」

と、技の確かさを実証する良い機会、
とばかりに挑戦者を張り倒し、
大勢の前で強さを実証したことがありました。

挑戦があったら絶対に背を見せない・・・
これが既成武道家の基本精神ですので
仕方がありませんでした。

空手時代は本当によく
いろんなところで演武をしました。

宴会の席、自治会のイベントの席、VIPの席、
お笑い番組の席、歌謡ショーの席・・・など
多彩です。

どんなところででも出向いて技を披露しました。
場を選ばなかったのです。

主に、試し割りといって、瓶を手刀で切ったり、
ブロックやレンガを割ったり、バットを折ったり、
人が驚くようなことを行いました。

双方本気で殴りあう実戦の試合も見せました。

「どうだ、強いだろう」と鼓舞するのが目的でした。

素人の人たちは喜んで見ていました。

そのように、いわゆる、空手は、
何にも知らない人でも分かる、
酔っ払いの方でも理解できる類のもの
でしかなかったといえます。

そこに次元の高い崇高な香りは微塵も無く、
ただ破壊殺傷の場面が展開されるだけでした。

サーカスや、大道芸と何ら変わらないもの
でしかなかったのです。

アクロバット的な妙技と強さを
見せ付けて人の関心を買う・・・

どこからかいくら崇高な理念を引っ張り出しても、
それが既成武道の性根なのです。

続く・・・