稽古次第 「礼」
和良久において、一般的な稽古の流れは凡そ下記の如くである。
1、神前に礼 〜 お互いに礼
2、準備体操
3、天地呼吸法
4、八力の型
5、四方打ちの型 (棒使用)
6、75剱
7、75剱の素手 (打撃・柔術)
8、整理体操
9、礼
10、清掃
・・・以上の次第から、まず「礼」について述べます。
礼は、周囲と自分との最も適切な「調和」がとれた状態を学ぶ。
それは自他のバランスの調整法であり、他を思う思いやりの表現である。
また「間」をとる稽古でもある。
人は近づき過ぎるとぶつかり、離れ過ぎると疎遠になる。
近寄りすぎず、離れすぎず、ほど良い距離をおくことが
よい人間関係を保つ。礼はそれを学ぶ。
武道において最も肝心なのものの一つに「間」がある。
向き合うお互いの程よい間は、お互いに技を出しやすく
戦いを離れた、美しい技の交流が展開される。
常の礼儀の併行は、人間関係を円滑にする
気持ちの良い清涼剤のようなものである。
秩序ある社会において、お互いの存在を認め合うことは
欠くべからざる基本原則である。
人は、他に自己の存在感を認めてもらえたとき無上の幸福を覚える。
親子、兄弟、夫婦といえども、相手を無碍に扱うことは喧嘩の元となる。
馴れ合いの関係は決して長続きしない。
堅苦しく感じても、相手を尊重した一定の間をとり
節度をもった言動が長続きする秘訣である。
親しい中にこそ特に「礼」に気をつけなければならない。
蜜のような甘い関係は飽きられる。
水のような、空気のようなさらっとした爽やかな関係をもちたい。
水や空気は毎日口にしても飽きないどころか、
まったく必要なものである。
礼儀作法とは、水のように、空気のように
周囲に調和するための技法である。
また、礼にはもう一つ、
心身が向上するのに必要な秘密が隠されている。
礼をする時、まず呼吸を整えるため息を吸う。
このとき顎も肩が上がり、背筋が反る。
次に息を吐く。
このとき自然に顎と肩が落ち、背筋が真っ直ぐに戻る。
この吐く息の状態こそ「落ち着いている」状態である。
落ち着くとは、中心の軸が定まり、重心が下に下がり、
体が地に付いた安定した状態のことである。
この姿勢を正して、頭を下げる(実際は体を倒す)という動作は、
剱を振り上げ、振り下げることと同じ運動をしているのである。
これは、れっきとした技である。
●相手の腕を取って、床にねじ伏せる。
●剣を上段から、下段に打ち付ける。
●強烈な突きを突く。
などの要素が入っている。
また礼をするタイミングは、丁度技を出すタイミングと同じである。
立ち合い(試合)の時、二者が向かい合い、お互い近づいてきて
間が締まる。
そして丁度の時を見計らって「ここだ!」とばかりに一瞬に技を繰り出す。
この「ここだ!」という所と「礼」をするタイミングとは同じなのである。
このように、礼儀が正しいと言うその体制と心構えは
「強い」ということと比例する。
続く・・・