75剱〜言霊剱 (8)
「螺旋する呼吸」
八力(八剱)は、螺旋運動によって命を吹き込まれます。
例えば、「凝」を打つとします。
凝の腰が決まったかっこうは、右手掌が上に向き、
左手掌が下に向いたかっこうです。
それで、吸う息で左上に上がっています。
しかし吸う息のみでは、半円で、片側通行なのです。
呼吸は「円」を描いて働いています。
この場合、吸う息で上がる「凝」は「吐く息」からスタートします。
まず最初に、降りる半円(吐く息)を描きます。
次にもう一つの上がる半円(吸う息)を描きます。
「吐く息→吸う息」となるのです。
この二息で「凝」を打ちます。
しかし、これでは力が不足しており動きが弱々しいのです。
吸うためには吐くのですが、この二息が、たんに円を描いている
だけでは、「打ち」としては弱いのです。
これにもっと勢いをつけるのが三拍子です。
つまり、より強くするためには、呼吸をもう一つ増やすのです。
つまり「三息」で勢いを増します。
吸う息→吐く息→吸う息・・・これで螺旋運動になります。
遠心力が働き、最後の吸う息の技「凝」が飛んでいます。
そして打つ瞬間には、同じ息を重ねます。
つまり 「吸う息→吐く息→吸う息・吸う息」 ということです。
でないと「吸う息→吐く息」と交互に続けていたら
動きがクルクルと回るばかりになってしまいます。
螺旋運動から直線運動への移行です。
打ち放った時は、力は強く一点に集中します。
それは「直線」という形をとって飛んで行きます。
技が意志をもって、螺旋運動による遠心力から発生した勢いで、
目標に向って解き放たれた瞬間です。
これとは反対に「解」という打ちですが
この打ちは、右手掌が上に向き、
左手掌が下に向いたかっこうで、
上から吐く息で左下に下りていきます。
もちろん、先と同じで、三息です。
今度は「吐いて、吸って、吐いて・吐いて」で打ちます。
呼吸(息・水火)は螺旋を描き、力を発生し万物を動かしています。
人も呼吸により動いています。
その呼吸力をもって活動する方法を勉強するのが武道です。
呼吸により木剱を螺旋させ、それにつれて体を動かします。
呼吸(気)→剱→体の順で動くのです。
よく武道で「気剱体の一致」などと言いますが、
まずこの呼吸と言うものの実体(螺旋)がわかっていないと、
この一致は、いつまでたっても覚り得るものではありません。
呼吸は、肉眼ではとらえられませんので、稽古では木剱を用います。
木剱は呼吸(水火)の具現化したものです。
水水火と書いて「ツルギ」と読むのもそういった意味から来ています。
顕なるものは、すべて剱より生ずるのです。
前にも申し上げましたが、剱は霊的なものを形象化させる
「エネルギー変換器」のようなものです。
続く・・・