「原点」(1)
以下の文は師奥山が私に残した資料である。
この資料をもとにわれ一念発起し、
この技こそ、悪魔を調伏し、
みろくの世到来の礎を築く
もののふ育成のための大事の技
なることを直覚す。
そして、朝夕一心に祈願を凝らしつつ
弛まず屈せず無我夢中にて稽古に励むに、
ありがたきかな、神明速やかに
この願いに答えたまう。
大神様のご加護と四代教主の篤き
ご教導を得、和良久の生まれるに至れり。
簡略化した文体であり、
また神道用語を用いたものゆえ、
一般には難解なる文であるが、
しかし、これを基点として
様々な理念と実践がまるで渦潮の勢いの如く
私の中に入ってきたのである。
いままでの、若き日から無駄であり
遠回りだと思っていた自己の体験が
ひとつ残らずここに生かされ、
その体験がここに至るための
下準備なることを痛切に覚ることを得た。
いま、天の時を得てここに公開す。
稽古人諸氏には、信仰の心をもってこれを読み、
その内容をよく腹に置かれんことを望む。
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剱(水水火ーツルギ)
一、道として縦と横が組まれる。
1、縦は「玉、鏡、剱」の剱の道である。
『言霊の助けによりて大神の御心を
直覚(さと)り、鎮魂帰神(みたましずめ)
の神術によりて、村肝(むらきも)の心を
練り鍛へしめたまいて』(感謝祈願詞)
この為、神よりの道として、理念の確認と同時に、
神への道としての実践を、息、呼吸、
気、水火と積み上げ、所謂、遠当(とおあて)より
言霊剱に至るいイキの鍛錬を行うものである。
2、横は「心、言、行」の行の基である。
人の行の根元であるイキと共に、
体ー腰が正しく作動する為の基礎訓練を行い、
いかなる働きにも対応出来る自然の体造りである。
また、同時に保健法でもある。
二、理念
原点を、声の発生に於ける水火におく。
力は水、火の旋回により加力され、
一つの極点で呼気が重なり「打」と顕れる。
理念では「火凝霊」「ますみの鏡」と展開され、
剱に於いては、その棟にあたる
「火、火水、火火水」である。
三、実践
イキ(息、呼吸、気、水火)のはたらきは、
「水火の御伝」「水茎文字」と顕れる。
剱に於いてはたらくものは刃であり、
水茎文字が水火に基づく経緯八つの基本剱と
75声より生ずる75剱のあり方を示している。
気のはたらきが生ずる為には、
次の三つの組み合わせに於いて、
呼、吸のつなぎと共に打ち方の息が加力となる。
一、火(左)、水(右)剱の右(吸、上る)、
左(呼、下る)旋。
これは経緯八剱であり、上、下田がこれを司る。
一、体の内、外旋
水茎文字が方向を示す呼吸によらない旋回
中田がこれを司る。
一、体の上、下、進退
これも呼吸によらない。剱では「ウ」の剱
中田がこれを司る。
力は、八剱、旋回、膨縮ー三要素ーの
綜合と均衡の下に成立する。
以下、声とイキの対称より順を追って理念を
展開し、日常稽古に及ぶ。
続く・・・