6.そして大本へ
「はて綾部というと、あの植芝盛平師が修行し、そして合気道を創始した大本のあるところでは…」と思い、急遽電車を飛び降り、そのまま大本の本部まで訪ね歩きました。
初めて大本に足を踏み入れた瞬間、何ともいえない懐かしさに体が震えたのを今でも覚えています。
初めて訪れた私を大本本部の皆さんは大変親切にもてなしてくださいました。そこで古老より、大本におられた当時の植芝先生のお話を聞くことが出来、別れ際「亀岡にも行って修行してみては」と進められました。
大本は綾部と亀岡を二大聖地とし、綾部は祭祀を司り、亀岡は神教の宣布を司っています。結局武田行きをやめにしては亀岡で一週間の修行を受けるこにしました。
そして一週間の修行を終えた日、私が武道をしていることを知る大本の職員の方は、私をある人に紹介すべく同苑内にある武道場「鳳雛館(ほうすうかん)」に案内してくださいました。
そこには予期せぬ出会いが待っていたのでした。
その鳳雛館の玄関先では、一人の老人が何やら一心に木を削っておられました。
「こんにちは、奥山先生」
と、声をかける係員の方に「やあ!」と返事はするものの、老人はその削る手を止めることもなく作業を続けておられました。
やむなく、しばらくじっとして木を削る様を見ていました。するとその木は徐々に形になっていきます。
奥山忠男先生略歴前のページに戻る 次のページへ進む第一部