特定非営利活動法人 武道和良久

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誌上講座157


「宇宙の技」 〜平面から立体への移行


物事を一方向から見ることをしないで、
様々な方向から見てみると、
同じものであるのにまるで別の物の様に思えることがある。

右も向きを変えて見れば左になり、
同様に上も下になり、前も後ろになる。

このように平面的思考をやめ、多面的思考・・・
つまり立体的な思考をもって技を追求していくと、
本当にとんでもない、奇想天外なる技が顕現する。

「正面に向き合った状態で組んで返す」と言う常識を覆し、
真正面に向き合わずに、例えば相手を左側に見て、
つまり左を自分の正面にしてしまって組むのである。

同様に、相手を自分の右に置いて、そこを自分の正面に・・・
また相手の後ろ、つまり背後を自分の正面にしてしまう。

相手との技のやりとりを一方向でのみ行わず、
右に、左に、斜めに、そして後ろに身を転じて行う。

またこれは体的な技ではなく思考(霊)的な技ではあるが、
上から、または下からも仕掛ける。

このように多面的に相手をとらえて、
多次元空間をつくり我が身も同様にその空間に溶け込まして活動する。

例えば皆さんご存知の「ア」と言う剱を使うとする。

アの剱は、「凝」で組む剱であるが、
これを単に正面から組むことなく、右から、左から、背後から、
斜めかから組む。

その動きは、まったく基本(八力)に則ったものでなくてはなら
ないのはもちろんである。

「アの剱」であれば、どこから、どのように打ってきても「凝」で
組み「解」で返すという確実な動きと意思の強さが大切だ。

和良久の技は、すべて八力という基本から一歩もでることなく
多面的な身のこなしが可能である。

それは重心も、軸も動かないからこそ出来る、
和良久ならではの正確無比なる緻密な体さばきである。

同じように他の剱もすべてであるが、
平面的にとらえる稽古が充分に出来たなら、
以上のように立体的にとらえる変幻自在の動きをもって対処してみる。

おそらく牛若丸や小次郎はこのように多面的に物事をとらえ、
立体的に動ける技能をもっていたと思われる。

「前と思えば後ろに立ち」「右にいたのに左に」と
言った変幻自在なる空間の移動は、螺旋運動を基本においた行動と、
そこから生まれる「物を多面的にとらえる思考」から可能になる。

このような相手に対し、平面的な戦術しかしらぬ当時の武芸者たちは
さぞや驚愕したことだろう。

彼らにこの動きを教えたのは、
おそらく異次元に住む者からの導き手であり、
その導き手を人は「天狗」と称していたのかも知れない。

牛若丸の修行した鞍馬山は、
金星からやってきた魔王と呼ばれる宇宙からの訪問者が祀られている。

そこで牛若丸は「八艘飛び」なる術を身につけたと言う。

「あちらと思えばまたこちら。こちらと思えばまたあちら」
これは八力の技を習得してこそ可能な技術である。

そんな妙術を駆使する者に対抗出来る者など、
そうざらには居るはずはない。

牛若丸、小次郎・・・
彼らは恐らく一人で一個部隊を壊滅するほどの力をもっていたと推測する。

ある種、国が恐れる存在でもあったろう。

国家権力というのは良いときは良いが、
従わなければすぐ牙をむいて抹殺にかかる。

国が恐れるほどの驚異的な技の持ち主。

その共通点は平面的ではなく、多面的に思考し、
活動できる能力を有しているということである。


続く・・・