殴り合いの心理 (1)
私はご承知のように、以前は空手の世界にいました。
常に試合を前提としたスパーリング形式の殴り合い、
蹴り合いの稽古・・・いや、練習に汗した日々でした。
<稽古とは古(いにしえ)をおもう、考えるということであり、
スポーツのような練習とは全く趣を異にします>
ノックダウン形式を採用する組織におり、
毎日戦々恐々として暮らしていました。
いつも対戦相手のことを考えては脅え、
自分を奮い立たせるために大きな口をたたき肉食を主にし、
大酒を飲み、練習以外の日は戦いの恐怖からのがれるため、
低俗な遊びにふける。
しかし、表向き真摯な武道家を装い、
いい子ぶって謙虚な風をしていますが、
内心はまったく逆のことを思っていました。
格闘をやるとは、結局情けを棄て、
すべてを破壊する根性がないとやっていけません。
そのように、野獣のような体力と精神を得ることを
いつも切望していました。
小さな子供たちに偉そうに「青少年健全育成」なんて
掲げていますが、選手たちはもとより、師範たちも
そんなことは単に隠れ蓑に過ぎず、二の次です。
ただ相手を叩きのめす技術を身に付けるのに必死ですから。
自分のことに一生懸命なのに人のことどころじゃありません。
一端試合台、もしくはリングに上がる前などは、
たとえそれがチャリティーの場であってももう誰々のため・・・
なんてことはこれっぽっちも浮かばず
ただ怖くて怖くて・・・しかし、そんなこと誰にもいえないので
「あんな奴たいしたことない。一発だ!」なんて偉そうなこと
言って自分をごまかします。
さて・・・鮮血の修羅場、殴り合いの開始です。
続く・・・