ゆるめる、しめる
〜大事な技の要素
武道の鍛錬により、いかに「強く速く正確に」
技を繰り出すことが出来るかを追求します。
何のためか?
強く速く正確に技を出そうと思えば、
自分を最高の状態にもっていかねばなりません。
全身のあらゆる身体機能を駆使し、
精神を集中させ、内なる力を点火させて爆発させ、
一気に外に向けて発射するのです。
天から授かった自分の力を埋もれさせることなく、
生きている間に全開させ、
人として生まれた能力の最高の状態を維持し、
常時発揮させるためです。
それによって人のもつ力の素晴らしさを知るとともに、
自分が人として生まれたことをあらためて神に感謝し、
讃美するためです。
俗に言う「天賦の才能を発揮する」と言うことです。
人が通常の限界を超えた(と思われる・・・
しかし、本来限界などない)時、人は宇宙を感じます。
実は、これは人が一所懸命に物事に打ち込むと
当たり前におこる現象なのです。
ただ、そこまで命がけでやれる人がいないということと、
そういった環境、条件に恵まれないからともいえます。
武道は、その環境と条件をつくり、
人を命がけの状態に追い込みます。
そして、その人のもつ可能性を呼び覚まします。
つまり神の子たることを自覚させる鍛錬なのです。
・・・だから、武道は他に比して何よりも素晴らしいのです。
一生をかけて行えるに値する道なのです。
宇宙即吾・・・と言った感覚が、
人によってそれが訪れる時期が様々ですが、
定めれらた稽古を正しくおこなうなら必ずそれは訪れます。
武道は他のあらゆる伝統芸術より歴史が長く、
また、あらゆる宗教、芸術、学問に影響を与えています。
それは現代も脈々と生き続け、
これからも陰の存在として、
日の当たるところで讃美されないかも知れませんが、
多くの人の心と体に生きる勇気と智恵を与える
存在となることでしょう。
最も古くて、最も新しいものと言えます。
宇宙は、言霊で言う「ウ」の「中」です。
「ウの中」とは前後、上下、左右が
同時に存在する空間のことです。
この「ウの中〜宇宙」に身を置くための訓練が
武道であります。
技を、最高に強く速く正確に繰り出すためには、
沸点に達する力と集中力とが要求されます。
それは前後、上下、左右の揺さぶりを
同時に存在させることで可能となります。
前後、上下、左右を同時に存在させることは、
技を繰り出すのに、欠くことのできない大事な要素です。
しかし、前後だけにとらわれると、
他の上下、左右を忘れ、また同様に上下だけにとらわれると、
他のものが抜けてしまいます。
それぞれ分けて行うことは難しく、
また不可能でありましょう。
前後、上下、左右・・・
これらを同時に存在でき方法があります。
そうです。いま皆さんが取り組まれている螺旋です。
螺旋を生み出すには、偏った方向の運動では
まろやかな旋回は得られません。
螺旋は、また球体を形成させます。
球体には軸があります。
そして、それを中心に外部へ向けて膨張して膨らみます。
これは宇宙の働きそのものです。
その時に無数の前後、上下、左右の空間が形作られます。
軸を中心に、前後、上下、左右の空間が形成される・・・
これが宇宙の秩序であります。
さあ、本題です。
すべての技の秘密が螺旋の中にあります。
まず螺旋の動くさまを思い出してください。
螺旋が円滑に旋回するためには
どうすればいいのでしょう?
まず旋回させるには、体が柔らかでなくてはなりません。
そして、旋回の中心となる軸がなくてはなりません。
この軸を高速に旋回させることができれば、
技は自然に強く早く発射することができます。
では、旋回を高速化させるには、
どうすればいいでしょう。
旋回すれば体は、心はどういった状態になるのでしょう。
高速に旋回させるには、固くてはなりません。
まず「全身の力を弛(ゆる)める」ことです。
これは「柔」であり、力の拡散です。
そして、旋回の際、振り回されることないように、
「腰が落ちて」いなければなりません。
次に、旋回を起こしたときに、
拡散した力が真ん中に集中します。
そして力が中央に集中したときに
発射が起こります。
発射、つまり、打ちを行ったときに行うこと、
これが「固める」ことです。
これは「剛」です。
弛める、腰を落とす、固める・・・の繰り返しですが、
これらの大事な要素は、螺旋をおこなうことによって
容易に出来るのです。
ある時、師が「コンニャクで鉄を叩き割る」という
表現を使われたことを思い出します。
これも、まず力を抜ききることの
重要性を述べたことでしょう。
武道は、人のもつ無限の可能性を引き出し、
実社会に役立つ心と体を育む文化です。
これこそ日本が世界に誇る
最高の霊的文化遺産と誇ってもいいと思います。
続く・・・