特定非営利活動法人 武道和良久

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誌上講座55

75剱〜言霊剱 (12)

剱稽古の効用〜3

心身の健康には、リラクゼーションを保つことが最適だと
言われています。

しかし、リラクゼーションだけの稽古では自己陶酔の傾向がつよく、
人は次に移るアクションを考えねばなりません。

「緩める」という「静なるリラクゼーション」から、
「締める」という「動なるアクション」に移るのです。

この適度な動と静の移行を瞬時に行えてこそ
イキイキとした人生を歩いていけるものと存じます。

人生には適度な刺激があってこそ
「向上への道」が開かれるように思います。

長い緊張感の持続は確かに害があります。
それは神経を破壊し、内臓を痛めます。

しかし、瞬時の緊張は逆に神経を刺激し、
細胞を活性化させます。

それは具体的には筋肉を必要に応じて硬直させ、
ゆるんだ肉体を引き締まらせます。

相手の微妙な動きを察知するのは、右脳の分野であります。

その動きを察知して、体にアクションを起させるのが左脳の分野です。

この、それぞれの脳を同時に、しかも精一杯
活躍させることができるのも武道稽古の効用であります。

武道は、必ず相手を必要としています。

独りよがりな自己陶酔をしていたのでは、稽古になりません。

相手の「打ち」によって、こちらがスイッチオンされ動き出します。

この「打ち」とは、他から気付きを与えられるチャンスと考えてください。

稽古中、自分勝手な都合のよい動きをすると相手の技に
巻き込まれてしまいます。

相手の動きを良く見て、それに合わせて技を掛けねばなりません。

つまり相手との調和がとても大切なのです。

この「相手を気遣う」という関係こそ、人間として
鍛錬しなければいけない部分ではないかと思います。

当たれば必ず傷を負う、という危険性が心身の全システムを
フルに可動させ、それにより潜在していた能力が呼び起こされます。

剱の合わさった時に鳴る「カーン」という乾いた木の音は、
ゆるんだ気持ちを瞬時に引き締め、注意力を最大限に高めます。

そして、その剱の当たった時の衝撃は軽くても何十キロもの衝撃が
加わり、強いもので何百キロもの重圧がかかるほどになります。

これはウェイトトレーニングなどで、バーベルを持ち上げる運動が
ありますが、その瞬間にかかる重量となると比較にならない重さを
持ち上げていることになります。

それが持続して持ち上げることになれば、体格の優れた人でないと
無理でしょうが、瞬間であれば老若男女関係なく出来るのです。

それが僅かの時間にも関わらず、心身に高い効果を上げている
秘密なのです。


続く・・・