袴
「なぜ、袴をつけるんですか?別に着けなくてもいいんじゃないですか?」
「袴を着けるとはさっそうとしてかっこいいですね」
ある日、道場生からそんな言葉が飛び出してきました。
・・・それでは袴についてお話したいと思います。
歴史的なこと等、専門的な事はさておいて
武道稽古における効用について申し上げます。
袴は、着け慣れて来ると、袴を着けず、稽古着だけの姿では、
例えば上着を着て、ズボンをはかないような感じになります。
それほどの重い存在感があるのです。
袴を着けると、確かに下半身がドッシリと安定したように見えます。
特に紺色の袴は凛々しいものです。
また、足癖の悪いのが良くなり、立ち居振舞いも優雅になります。
背筋もしゃきっと伸び、いわゆる「凛」とした装いになるのです。
これは決して見た目の良さだけではなく、
実際に体に様々な変化をもたらせるのです。
それでは私たちに一体どんな影響があるのか・・・
以下にざっと箇条書きにしてみましょうか。
●骨盤の矯正になる。
〜和良久の袴のつけ方は、下に着ている稽古着の帯の結び目の
上に袴の前の帯を置いて締めます。
稽古着で帯を締めた上、また袴の紐で頑丈に
幾重にも締め上げていきます。
稽古着の帯を入れたら、それは合計4回腰の回りを締めています。
これは骨盤を固定させ、それは流行りの骨盤矯正用ゴムを
腰に巻くのと同じ効果です。いえ、それ以上かも知れません。
袴を着けると背筋がしゃんと伸びて気持ちのいいものです。
稽古が終わると、脊髄や骨盤が自然に正常な位置に戻ります。
●内臓の下垂を防ぐ。
〜下腹部から締めますので、腹の肉が上がり、
内臓の下垂をストップさせ、胃腸の働きを良くします。
●意識をより正確に丹田に集中できる。
〜紐の結び目が、丁度臍下丹田の位置になるので
意識をむけやすいのです。
袴を着けるとエネルギーの強さが変わります。
●難解な腹式呼吸が容易になる。
〜ヨコの運動は、胸式呼吸であり、タテの、つまり上下の運動は、
下田の担当です。それは「強さ」を得ます。
紐でしっかり下腹(下田)に締めているので、
下腹に力を込めやすい状態になっています。
●藍染めは健康に良い。
〜和良久でつけている袴の紺色は、藍染めであり、
ちなみにその藍染めの生地を縫製しているのが
80歳を越えたお爺さんです。
このお爺さんの作り出す袴はまことに見事で、
丹念につくられた職人技を思います。
約一年ほど体調を崩し、その間袴の製作は中断されてました。
どうなることやらと案じてましたが、幸い調子を取り戻し、
元気になられたということで、また袴をつくられています。
一体いつまでつくっていただけるのか心配ではあります。
●見た目だけではなく、実際に下半身が安定する。
〜円錐形に形作られている袴の形状は、地に向って末広がりであり、
それはそのまま水火(息)の拡がりでもあります。
これは霊的にも安定性が確保されています。
腰を締め、足元を緩めた形状は、人体の中心に力の根元を
置いていることを示しています。
●立ち居振舞いが良くなる。
〜袴を着けると足さばきが大股にならず、小股になり、いわゆる
行儀が自然と良くなります。
私も空手時代の足癖の悪さを、袴をつけることによって、
その「足癖」に封印をすることが出来ました。
袴をつけて「蹴り」をするのは行儀のいいものではありませんし、
する気もおきません。
それはスカートをはいている女子の気持ちと同じではないかと存じます。
●気を締める。
〜袴を着けるには「結ぶ」ということを繰り返します。
この結ぶと言うことを繰り返している間に、
体だけの引き締まりだけでなく、「気」も締まってまいります。
自らの手で一つ一つ紐を締めていく作業を繰り返します。
これは「さあ、これからしっかり稽古をするぞ」という、
稽古に臨むにあたって、精神的にテンションを
高めていくのに効果があります。
また、紐を通して「結ぶ」という「+」の形に印を上重ねしていくこ
とは、霊的エネルギーを高めることになります。
・・・・ざっとこういったところです。
その効用はまことに多大なものであるように思います。
皆さんも健康増進と、心技向上のため袴を着用されることを
お薦めいたします。
続く・・・